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コラム・筆は一本也

「値上げの秋の月見酒」

東海から関東甲信越、東北、北海道を通過した大型の台風18号は、各地に大きなつめ跡を残した。15日から16日にかけては、埼玉、群馬、三重、宮城県などで突風被害が発生。台風が接近中の地域では、竜巻が発生しやすくなる可能性もあるという。京都府や滋賀、福井両県には初の大雨特別警報が出され、河川の氾らんなど大きな被害をもたらした。京都と滋賀は、震災・原発事故時に福島県入りし、救援活動を行った恩義のある府県でもある。

▼これからも巨大な台風に警戒する必要がありそうだが、そうした中、19日は中秋の名月。台風、竜巻、汚染水をしばしの間忘れて、秋の宵を楽しもうと思う。天気にも恵まれ、格好のお月見の宵となりそうだ。古(いにしえ)より「十三夜」(10月中~下旬)の習わしもあり、十五夜の月見をしたら十三夜も月見を-という。のちの月見をしないと、「片月見」として忌まれるとされる。そして翌20日は彼岸の入り。

▼名月は、ほぼ地球上いたるところで拝める。幸せな中で月を眺める人、戦火や災難に遭い、住む場所を追われて不幸のどん底で月を眺める人。月見ひとつとっても様々な思いが交錯する。人の無常は今も昔も変わらぬものかもしれないが、それでも現代社会の矛盾には我慢のならないものが多過ぎる。「汚染水の後始末を被災地に押しつけ、首都圏は五輪ビジネスの皮算用-」(16日付、毎日新聞)もそのひとつ。

▼さて、秋分の日の23日は、太陽が真東から昇り、真西に沈む。このため昼夜の時間が等しくなり、その後は夜長の秋容へと移ろう。先祖の墓参りをし、邪気を払うとされるおはぎを食べるのが一般的な習わしだが、最近の各家庭はどうなのだろうか。ともかく秋は行事が目白押し。スポーツ、食欲、読書の秋でもある。左党にとってうれしい月見酒というおまけも付く。しかし、喜んでばかりはいられない。「値上げの秋」を忘れていた。【天下泰平】
                     (2013・9・18)



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