緊迫したシリア情勢が主要な討議となる主要20カ国・地域（G20）首脳会議が5日、ロシアのサンクトペテルブルクで開幕した。同会議は経済問題について主要各国が討議する場だが、今回は異例の展開。シリアへの軍事介入を目指す米国と、反対するロシアが対立、サミットの場で攻防が繰り広げられる見通しだ。日本は米国を支持する立場だが、イラク戦争の過ちを教訓に交渉による停戦を模索すべきと思うが。

▼米国は議会の承認を待って90日程度の軍事作戦を展開する見通しだが、同盟国である日本の対応は極めて難しい局面に立たされている。ロシア、中国は軍事介入に強く反対しており、安倍政権の対応によっては北方領土問題や周辺国との関係改善がさらに冷え込むことが予想される。いつの間にか米国主導となってしまったTPP（環太平洋経済連携）交渉、収束の緒にもついていない原発事故処理、さらに財政問題などを抱える日本が果たして突き進んでよいものか。

▼ベトナム戦争、イラク戦争と米国の軍事介入はこれまでにも行われているが、シリアに対する軍事介入は国連安保理の議決を経ておらず、日本は先進各国、周辺国とのバランスを取らなければならない微妙な立場にある。これまでのように米国追従、一辺倒ではまかり通らなくなっている国際関係をあらためて認識する必要がある。米国は軍事介入の理由に、国際法違反であるサリンなどの化学兵器の使用を挙げているが、一方で安保理を無視するのも違反である。

▼G20で安倍首相はロシアのプーチン大統領とも会談するが、シリア問題の対応を厳しく問われるのは避けられない。進展を模索する北方領土問題だが、尖閣諸島問題を抱える中国との今後の外交交渉にも波及しかねない。周辺国、アジア諸国の一部はいまだに日本を好戦的な国とみなしている面がある。シリア内戦の対応は、内憂外患にある日本にとってまさに「シリアスな外交展開」と言ってよい。【天下夢想】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・9・6）