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コラム・筆は一本也

「値上げの候…」

初秋の候、秋涼のみぎり、虫の音もようやく…等々は、秋の時候のあいさつ、枕詞の定番であるが、この秋は「値上げの候」も付け加えたい心境だ。円安による原材料の高騰もあり、食料品やアルコール類の値上げラッシュに悲鳴を上げる日々が続く。火力発電などの化石燃料が増え、コスト増から企業収益を圧迫していることが背景にあるようだが、経済再生「アベノミクス」が上げ基調に結び付いていることも事実。ともかくも家計が圧迫される物憂い秋を迎えた。

▼ニチレイ、味の素、日本水産など大手食品が相次いで冷凍食品を値上げした。ブドウの不作から輸入ワインが、さらに10月からは日本酒の値上げが予定されている。「わが家は左党とは無縁」などと言う甘党一家でも、ジャムや冷凍ものの高騰に音を上げている。厳しい残暑でエアコンを常時使用する家庭が多いが、今月から東北電力も家庭向け電気料金を引き上げた。平均8・94%という高率だ。来春にもある消費増税を前に、値上げラッシュは収まる気配がない。

▼23日の秋分の日を境に、時節は日に日に夜長の秋へと移ろう。そこでじっくり晩酌でもといきたいが、値上げ後の電気の使用量がになるところ。それに、日本酒も一部の蔵元が近々値上げを予定とか。愉しみな酒も昭和生まれの小生には、愁いを帯びた「悲しい酒」になってくる。サラリーマンの肝心の賃金は、中小企業においてはベースアップする要素もなく、わが家の小遣い闘争だけが本格化しそうだ。

▼消費増税をめぐっては、安倍首相肝いりの「集中点検会合」の有識者から条件、注文付きで増税をやむを得ないとする意見が多く出た。ところが、首相の経済政策を支える肝心の2人のブレーンが「予定通り増税すべきではない」との主張を展開し、来春の増税に待ったをかけた。増税への序盤戦のように、生活用品やガソリンなどが相次いで値上げ。ついには“燃える秋”となってしまうのか、怒りは秋霜烈日の如く。【天下夢想】
                                                     (2013・9・4)


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