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コラム・筆は一本也

「方向性の違う危機感」

放射能物質による環境汚染を世界はどう見ているのだろう。確かめるまでもないかもしれない。今や東京電力福島第一原発の汚染水漏れは、打つ手なしの状態だ。汚染水漏れは拡大するばかりの最悪の事態である。東電は今回の地上タンクの汚染水漏れを最大の危機とし、「原子力部門のトップが現地に常駐して態勢を強化する」と最優先での取り組みをコメントしたが、何を今さらと言いたくなる。

▼汚染水は外洋に流出した可能性が極めて高い。海外の目が気になる。地下水への浸透も気がかりだが、海洋流出もついに「可能性は否定できない」と公表するなど、対策の限界を露呈した。福島県や漁連関係者の原因究明の訴えを馬耳東風とばかりに決め込んでいた東電だが、もう逃げられない。こうした事態が続けば、半世紀近く要するとみられる廃炉作業は不透明になり、暗礁に乗り上げる可能性もある。

▼東電の迷走劇とも言える「否定~肯定、否定~肯定」の繰り返しは今に始まったことではない。トラブル隠しは常態化していたし、企業体質も改まらない。何よりも加害企業である認識がない。責任感もさることながら、まずは償う意思がないようだ。東電を1人悪者にしても仕方ないが、すでに東電1社で解決できる問題ではないことは確か。同社関係者は「3期連続赤字となれば、経営が立ち行かなく」と危機感を抱くが、危機感の方向性が違う。

▼福島の原発問題は、内外の知見に頼るほかはないし、何よりも国が関与しなければならない。ところが、その国も方向性がまるっきり違う。のらりくらりの国と東電、それを良しとする一部経済人の「三すくみ」状態が今の状況を招いている。汚染物を平気で海外に垂れ流し、「ようこそ、美しき国へ」などと外国人旅行者向けにビジット・ジャパン・キャンペーンを繰り広げる。いつから日本は厚顔無恥の国になったのか。【天下泰平】
                   (2013・8・22)


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