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コラム・筆は一本也

「悲しいかな、帰省の一コマ」

帰省ラッシュが終わったかと思えば、今度は早くもUターンラッシュが始まった。旧盆の14日にしては、ちと早すぎるのではないかとも思うが、これも時節柄がなくなったせいか、それとも仕事やバカンスの都合なのか。まずは地獄のラッシュを避けようという魂胆だろう。「盆々と待ったお盆はただ三日。要らぬ彼岸は七日」と皮肉った表現があった。戦後もしばらくは、休みは正月や旧盆くらいしかなく、今とはかなり違っていた。

▼「日本人は働きバチ」と言われた時代があった。OECDの統計によると、世界各国の会社の夏休みはオーストラリア1カ月半、スペイン1カ月、フランス5週間と労働時間が半分になる日が2週間、ドイツ最低33日・最大37日…、そして日本はと言えば5日。しかし、韓国の平均労働時間は2,256時間、これに対し日本は1,772時間。今やアメリカや中国、ベトナム、インドも日本に負けず劣らず働いているという。

▼それでも、かつての日本とは違う。有給休暇を含めて週2日の公休が定められ、祝日も多くなり、様変わりしている。帰省にしても、新幹線や高速道の整備などで昭和30年代とは比べにならない便利さだ。しかし、変わらないのが帰省でかさむ出費。円高是正のあおりや、国際情勢の変動などからガソリン代が高騰、これまでにも増して家計を圧迫する。墓参りの盆花は2倍、3倍と跳ね上がっていた。便乗商戦だけはいただけない。

▼帰省者が帰り際に、車のトランクに夏野菜、果物などを土産に詰め込む光景をよく見かけたが、原発事故以降、福島県ではそうした光景がめっきり少なくなった。野菜、果物の放射能検出がゼロならいいが、基準値を下回るだけでは不安は残る。申し訳なさそうに「ノー・サンキュー」となる。親兄弟と帰省者にわだかまりができたようで、「また、来てね」「また来るよ」とは素直に言えなくなってしまう。なんとも悲しい。【天下泰平】
                    (2013・8・14)

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