金融緩和、財政出動、そして成長戦略。何はともあれ、経済再生を目指す「アベノミクス」だが、実体経済にどれほどの効果を及ぼしているのか怪しくなってきた。大企業はじめ、輸出企業などはいたって好調だが、地方の中小企業にとってはそれほどのメリットはない。むしろ原材料の値上げ、ガソリン価格の高騰で消費者ともども青息吐息だ。このところの値上げラッシュに、悲鳴の声があちこちで聞こえる。来春には消費増税も…。

▼まさか東京電力の隠ぺい体質が乗り移ったわけではないだろうが、政府の月例経済報告も地方に住む者としてはピンとこない。3カ月連続の上方修正。しかも、景気判断に「10カ月ぶりの回復」としたが、とても実感が伴わない。まして、被災地では住宅着工や家財調達などが数値を上げているだけで、本来の景況回復とは言い難いのが現実であり、生活実感だ。

▼アベノミクスの危うさを物語るように、共同通信が行った世論調査によると、内閣支持率が6月の調査に比べて約12ポイントも急落して56％。参院選で大勝した安倍政権だが、肝心のベースアップもままならず、物価高が先行する現実から「ノー」を突き付けられた形だ。今後は党内で不協和音が強まっているTPPへの交渉参加、危うい中韓外交などの不安定要素が数多くあり、支持率低下は避けられない。

▼安倍内閣は不況時の保守回帰という政治の流れをどう見ているのか。安倍首相自身は、被災地の復興ひとつとっても浮ついた軽い言動のイメージを持たれており、電力料金の改定や深刻な雇用不安などでとりわけ被災地から火の手が上がる恐れがある。庶民目線での腰を据えた政治を期待したいが、幅のない政治家では望むべくもないものなのか。【天下無双】
                                                                                                          　（2013・7・25）