世界を震撼させた福島第一原発の爆発事故から間もなく2年5カ月が経つ。事故の収束どころか、高濃度の放射性物質に汚染された地下水があふれ、さらに海へと流出し、深刻な被害は拡大の一途をたどっている。恐ろしい現実だが、少なくも福島県民にとっては廃炉作業が終わり、「セシウム137」の半減期とされる30年後までは過酷な闘いが続く。

▼新聞の読者のページにこんな投稿が載っていた。福島県民の多くが経験しているに違いないが、ある農家の主人が妻の実家のある九州に採りたての果物を送ったら、送り返されたという。そこで山形県まで出かけ、サクランボを送り直したら大喜びされたという。信じられないような話かもしれないが、悲しいかなそれが現実である。

▼地方の自治体やＪＡなどは、「地産地消」の取り組みを進めるが、その地域の「安全」というものを重視した場合、消費者にとっては賛同できない面もある。たとえ食糧の安全基準をクリアしても、検出がゼロ以外はセシウムなりが微量でも含まれているわけで、まして幼子らに食べさせるには抵抗があるのはあたり前の感覚だろう。

▼消費者を責めるわけにはいかない。それよりも率先して被災地や東北、関東近県などの食を味わって欲しいのは、東京電力の管理職であり、役員たちである。それに原発をあくなき推進する安倍首相はじめ閣僚たちにも三度三度、福島産の食材をご賞味あれ。原発立地町に掲げられている標語「原子力明るい未来のエネルギー」を「明るい食卓」に代えて。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・7・24）