東京電力の原子力発電事故に対する隠ぺい、無責任体質は改まるどころか、ますますひどくなるばかりだ。福島第一原発の爆発事故以前からその体質が問題となっていたが、こうなると完全に国民の管理監督下に置かなければ何をしでかすかわからない。今度は福島第一原発タービン建屋の汚染された地下水が、海に流出しているとみられることを初めて認めた。

▼汚染水の海への流出は以前から指摘されていたが、東電はこれまでにかたくなに否定してきた。結果は、海洋汚染の拡大という最悪の事態にいたっている。試験操業が始まろうという矢先、出はなをくじかれた漁業者関係者からは怒りと悲鳴の声が上がっている。さらに坑道にたまった汚染水が今も地中に漏れ続けている可能性があるとしている。

▼東電は、放射能物質に汚染された地下水が港湾内の海水と混じり合い、今のところは湾内にとどまっているとしているが、今月15日には周辺の四倉海水浴場で原発事故初めての海開きがあったばかり。これでは、おちおちと海水浴もしていられないだろう。政府や自民党は経済優先で、安全は後回し。今回の事態を政府、原子力規制委員会はどう対応し、判断するつもりなのか。

▼イソップ物語に、少年が「オオカミが出た」と言ってうそをつき、3度目には誰も助けに来てもらえなかったという話があるが、懲りずに何度も続けているのがまさしく東電。「頭狂電力」と皮肉られ、悪しざまに言われても直るどころか、鉄面皮ぶりはいたって健在。そういえば、東電は約5000人の管理職に今月、一律で10万円、計5億円を支給したというが、被災者への補償も片付かないのに、それはそれは開いた口がふさがらない。【天下泰平】

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・7・23）