シボレー、ポンティアック、ビュィック、キャディラック、GMCトラックなどの車種で知られる米自動車業界最大手のゼネラル・モーターズ（ＧＭ）。世界最大の企業として経済全体に変革をもたらし、多くの新しい産業も派生させた。そのＧＭが2009（平成21）年、連邦破産法11条（日本の民事再生法）適用をニューヨークの連邦破産裁判所に申請し、破綻した。当時の負債総額は1,728億ドル（16兆4,000億円）。米製造業最大の倒産だった。

 ▼アルフレッド・Ｐ・スローン・ジュニア（1875‐1966）はＧＭで長年社長を務め、ＧＭを全米のみならず世界最大の企業へと成長させた人物である。1920年代に経営危機に陥ったＧＭを短期間に立て直し、さらに大量生産方式の洗練、利益率を上げる会計手法、モデルチェンジ手法の導入などでＧＭを拡大、他社の経営にも大きな影響を与えた。その一方で、「私は間違いを犯した」と自認することを躊躇しない経営者であったという。

▼ＧＭなどが本社を構え、「自動車の街（モータウン）」として知られるデトロイト市（ミシガン州）が18日、連邦裁判所に破産手続きを申し立て、財政破綻した。負債総額は180億㌦（1兆8,000億円）を超えるとみられ、米自治体の財政破綻としては過去最大となる。日本の自治体破綻では、北海道夕張市が負債額632億円を抱え、2007年に財政再建団体となった。人口が激減、公共サービス、社会福祉などが行き届かなくなるのは、日本も米国の自治体も同じである。
 
▼デトロイト市の負債総額1兆8,000億円。返済のめどは…などと考えただけでも、気の遠くなりそうな金額である。そういえば巨額の数字で思い出すのが、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の当面の除染費。ざっと1兆6,000億円。自動車で財政が潤った「自動車の街」。片や原発で財政が潤った「原発の町」。「バットマン」の舞台、ゴッサム・シティのように街は荒廃し続けるのか。こちらは、すでに人っ子一人いない町ではあるが…。【笑止千万】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・7・20）