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コラム・筆は一本也

「世界一安全な原発の再稼働」

首相就任以来、3度目の福島県入りとなった安倍首相だが、東京電力福島第一、第二原発10基の廃炉については、またしても否定的な見解が発せられた。爆発事故を起こした第一原発4基を除けば、「世界一厳しい安全基準をクリアすれば再稼働を容認する」と明言。何を根拠に「世界一安全」なのか、首をかしげてしまう。もともと、言葉だけの世界一安全を標ぼうしていたわけだから。それで、結果は想定外の未曾有の大惨事を引き起こした。
 
▼さて、福島県選出の森消費者担当相は2日の閣議後の会見で「全基廃炉は県民にとって当然のこと」とする旨の発言を行った。被災地選出の地元国会議員としては当然の発言であり、原発推進の安倍首相の意向とは異なる。当然、「閣内不一致」である。福島原発の存廃については、速やかに閣僚全員の意見、意向なりを聞くべきと思うが。参院選の争点から、「改憲」「増税」「原発」を事実上外すような姑息な選挙にならないよう願うばかりだ。
 
▼世界一厳しいとされる新しい規制基準による再稼働申請の動きも急だが、新潟県の泉田知事は東電柏崎刈羽原発の再稼働申請決定を受けて、「これ以上の地元軽視はない。信頼関係を構築する意思がないものと受け止めざるを得ない」と述べ、東電の姿勢を厳しく批判した。さらに泉田知事は「福島第一原発事故は収束しておらず、事故の検証や情報公開も不十分だ」とも発言。企業としての責任を果たさずに再稼働を申請することは、国民の理解は得られないと強調した。
 
▼一国の総理もこのような明確な発言をしてもらいたいが、何かとビジネスで忙しい安倍首相の口からは聞けそうにもない。小紙コラムでも幾度か取り上げたが、新たな政府事故調による検証は果たしてどうなっているのだろうか。安倍首相は自公政権誕生直後に政府事故調の立ち上げを明言したはずだが。被災者に寄り添うという口先だけの言葉では困る。福島県へは農産物ブランド化支援の名目で本年度100億円の予算を確保したというが、手土産だけでは終わってほしくない。
 
▼仮の話であるが、新潟県など日本海側に立地する原発で、爆発事故により放射性物質が放出された場合、偏西風に乗って太平洋側に飛散、東京など首都圏に拡大するのは必至だ。4日公示の参院選で自民党は原発再稼働容認を公約に掲げている。安全神話の脆(もろ)さを教訓として得たばかりではなかったのか。再稼働は、北海道、関西、四国、九州4電力が近く計12基を申請する見通しだ。総力を挙げて取り組むはずだった、再生エネルギーの掛け声はかき消されてしまった。【天下無双】
                         (2013・7・3)

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