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コラム・筆は一本也

「口先だけの慰め」

参院選公示日の7月4日に福島県で第一声を放つ安倍首相が、1日には本県浜通りを訪れ、沿岸部の復興状況を視察するという。首相に就任以来、実に3度目の本県入りとなる。半年足らずで3度も同一県を訪れるのは極めて異例だ。それだけに、被災地に寄り添う姿勢をアピールしたいのだろう。口約束の実行にはほど遠く、被災地からは「たんなる口先だけの選挙戦目当て」と軽視されている。
 
▼安倍首相はいわき市、楢葉、広野町などを訪れる予定だが、いわき市薄磯、豊間地区の沿岸部はいまだに津波で流失した民家、事業所の土台だけが残り、復旧は手つかずの状態だ。県内外に避難している約15万人の悲しみを、首相はどう受け止めているのか。とても尋常な感覚なら、被災地の視察で笑顔など見せられないのだが、能天気にも被災者と握手したり、記念撮影に納まったりと、一連のパフォーマンスには怒りさえ通り越してしまう。
 
▼さて、日本経済の再生を目指す「三本の矢」にあえて異論は唱えないが、東京電力福島第一原発の爆発事故で有史初の犠牲となった福島県民にも「異次元の三本の矢」がある。「除染による原状回復」「スピード感を持った損害賠償」「福島原発10基すべての廃炉」だ。ところが、原発推進の安倍首相と反・脱原発の福島県民とは真っ向対立する。「脱原発」「卒原発」という言葉遊びに近い形で言ってのける人たちは信用されなかったのだと思う、とも首相は言ってのけている。
 
▼国は今月23日、田村市都路地区での住民説明会で毎時0・23㍃シーベルト(年間1㍉シーベルト)以上でも再除染はしないと言い放った。さらに住民に自己管理を提案。何をか言わんやである。東電は原発を「国策民営」と主張するが、この言葉にも加害者としての意識の欠如が見え隠れする。国も政府も東電も一様にその場しのぎの口先だけが先行している。首都圏に電力を供給する福島の現状を、中央の役人、東電の全社員、すべての国会議員は本県入りし、現地視察なりするべきだ。【天下無双】
                         (2013・6・30)

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