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コラム・筆は一本也

「原発をめぐる分裂」

東京電力福島第一原発の事故は、原水爆禁止の平和の祭典や平和大会にまで影響を与え、参加団体の分裂を引き起こしている。毎年8月、核兵器のない平和な社会をスローガンに原水禁世界大会のイベントとして広島、長崎市で開かれ、国民世論の高まりに寄与してきた。ところが原発事故を機に、エネルギー危機や経営の悪化などから原発の再稼働を目指す団体と、脱原発を訴える団体の意見が対立、異例の分裂を招いている。
 
▼平和大会はこれまで原水爆禁止日本国民会議(原水禁)、核兵器禁止平和建設国民会議(核禁会議)が連合との共催で開催し、核のない平和な国際社会への重要な礎となってきた。今回の分裂により、今年は連合単独で開かれ、名称も平和集会に変更されるという。国際的にも活動内容が高く評価されていただけに、これからの平和活動に深刻な影を落としている。
 
▼原発事故をめぐっては、電力総連などが主体となる旧同盟系の核禁会議と、脱原発を訴える旧総評系の原水禁の対応が分かれるという事態。こうした様は、避難した人と避難しなかった人、賠償の対象になった人と賠償の対象にならなかった人という図式の福島の有様と似てなくもない。電力総連としては原子力損害賠償支援機構からの約4兆円に迫る東電への支援額を考えただけでも、再稼働を選択する方が安く済み、経営再建を支援するのは当然なのだろう。
 
▼すでに再生エネルギーに舵を切っているアメリカ、ドイツといった欧米の先進国に対し、原発事故を引き起こした当事者のわが国の対応の遅れは顕著。外からはわかりにくい日本的な組織論がまたぞろ顔を出し、足を引っ張っている。戦後の原水禁、原水協の分裂もそうだが、国際社会が原発事故の対応そっちのけで、原発ビジネス、原発再稼働に走るニッポンを奇異の目で見ているような気がする。【天下無双】
                         (2013・6・27)

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