空洞化が進む会津若松市の中心市街地「まちなか」に活気を取り戻そうと活動する「会津まちづくり応援隊」は、昨年6月の発足から1年を迎えた。
設立以来、メンバーらは市街地の商店街や史跡で地元の人たちから話を聞き取り、にぎわいを取り戻すためのアイディアを模索してきた。
3月に同市で開かれた活動の成果発表会では、「中心市街地の将来像とその具現化に向けた45のプラン」が提案され、本年度からいよいよプランに基づいた各種事業がスタートする。
会津若松市商工課・中心市街地活性化グループの佐藤あかねさんは「応援隊の活動については新聞や広報誌を通して発信しているが、既にさまざまな団体から協力依頼が来ている。市民の興味や関心は高まっているので、さまざまな人々が街中で活動することで、にぎわいを取り戻していけるのではないか」と、この1年の活動の手応えと今後の活動の抱負を述べた。
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JR会津若松駅と鶴ヶ城にはさまれた同市の中心市街地は、古くから城下町として発展し、経済・教育・文化の要として、住居や官公庁、公共施設などの都市機能が集積している。
しかし、郊外型大規模店の進出や、仙台、新潟など、近隣の大都市との競争で、近年は商店街に空き店舗や空き地が目立つようになった。
さらに、郊外にニュータウンが造成され、人口が流出するにつれ、商店主の高齢化や後継者不足にも拍車がかかった。
会津まちづくり応援隊は、市街地の衰退に歯止めをかけ、歴史ある街に再び活気を取り戻そうと、学生、主婦、会社員、商店主など、それぞれの立場の人たちが活動している。
メンバーは、現在31人。年齢層も10代から70代と幅広く、世代や職業の垣根を越えて、多方面な観点から意見を出し合っている。
設立後初めて開かれた昨年7月のミーティングでは、3時間にわたって熱い意見が飛び交い、活動を始めるにあたっての基本理念が設定された。
活動の目的としてあげられた3つの理念は、①住民が地元の良さを再認識し、誇りが持てる「まちなか」にしたい②子どもからお年寄りまで安心して住み続けられる「まちなか」にしたい③地元の人が喜んで集まることができる「まちなか」にしたい。
続いてメンバーらは、実際に市街地の現状を調査する「まちなか歩き」を6回にわたって行った。
商店街で、活性化についてのこれまでの取り組みを聞き、「空き店舗でも、住居を兼ねていると人に貸し出すことができない」など、具体的なケースを知ることができた。
また、商店街の路地裏までくまなく回り、街並みや、歴史、文化を再認識した。
一方、タウンマネージャーの指導のもと、にぎわいづくりの企画立案の手法を学ぶ「賑(にぎ)わい作りリーダー育成事業」も並行して行われ、6回の勉強会を開いた。
これらの活動を踏まえてミーティングを重ねた結果、今後の活動方針を示す6つの取り組みの柱ができあがった。
「みんなが集まる居心地のよい活動拠点〈プラットホーム〉を作ろう」という思いから「プラットホーム戦略」と名付けられた6つの柱は、①会津の文化や会津らしさを育成する事業「まるごとマーケット」②まちなかを舞台にした風物詩作り事業「オリジナルストーリー」③まちなかを魅力的にし、居心地のいい空間を作る事業「ホットステージ」④市民・商店街・行政による相互連携事業「がっちりスクラム」⑤市民・商店街・行政による情報発信事業「なんでもメディア」⑥生涯学習や、若者を代表とする市民みんなの活動を支援する事業「情熱エナ
ジー」。
今年3月に行われた本年度の成果発表会には、応援隊メンバーのほか、室井照平市長や一般市民ら約100人が参加し、6つの柱をさらに細分化した45の事業プランが提案された。
応援隊の今後の予定について、佐藤さんは「プロジェクトの具現化は今年から始動する。商店街や通りを、関係機関と連携を図りながら、どの事業をどのように実施していくのか検討中」と話す。
会津出身の新島八重を主人公にしたNHKの大河ドラマ「八重の桜」が放送中ということもあり、同市は観光地として県内外から注目を集めているが、佐藤さんは「まちなかを訪れる観光客の方々も増えている。ドラマ放映は会津の歴史文化を再認識する良い機会」と語る。
「通りの魅力を案内できる〈まちなか歩きガイド育成事業〉〈まちなか博覧会事業〉や、会津の心を伝え、もてなしを学ぶ〈会津しぐさ研究事業〉〈会津語り部育成事業〉などは、観光客にとっても大切な事業」とし、この機会に会津の良さを広くアピールして活性化を図る考えを示した。