東日本大震災の被災3県で1000人の似顔絵を描いた、宝塚市出身でニューヨーク在住の画家中川直人さん（69）が23日、福島県郡山市で開かれている「希望、1000人ポートレート展」会場を訪れた。「被災者の皆さんが笑顔を取り戻せるよう、ポートレート画を通して世界に発信していきたい」と話し、基金による支援組織を設立する考えも示した。
　中川さんは1962年に渡米。ニューヨーク在住50年。ニューヨークやサンフランシスコの近代美術館で個展を開き、作品の多くはニューヨーク近代美術館やマサチューセッツ工科大学、京都国立近代美術館などがコレクションとして所蔵。
震災直後から岩手、宮城、福島県を訪れ、被災者の似顔絵を1000人描くプロジェクトに取り組んできた中川さんだが、ポートレート展はニューヨークをはじめ、出身地の宝塚市、被災県で開いてきた。「９・11の同時多発テロの際、日本の学生が作った千羽鶴に感動した」という中川さんは、このプロジェクトに地震や津波で大切な写真を失った人たちを励まし、その姿を世界に伝えたいという思いを込めている。24日も会場を訪れる。
　似顔絵はそれぞれモデルとなった本人にプレゼントされる。
　展示会場の郡山駅前ビッグアイ・市民ふれあいプラザを訪れた中川さんは、品川萬里（まさと）市長をモデルに似顔絵を描き、プロジェクトの取り組みを説明した。米国の友人や岩手県のボランティア関係者も会場を訪れ、避難者や市民らとの交流を深めた。
　中川さんは今回のプロジェクトと並行して、有名人のサイン入り肖像画を100人分描いた。作品はオークションにかけ、売り上げを全額被災地に寄付する。菅直人前首相、ジョン・ルース駐日米国大使、ドナルド・キーンさん、俳優のオリバー・プラットさんらを描いている。
　同展は“希望、1000人ポートレート展”実行委員会（山口進実行委員長）の主催。福島県内在住者のポートレート300点を展示している。26日まで。午前10時～午後7時。入場無料。