世界が注視した東京電力福島第一原発の爆発事故から9カ月。福島原発事故の状況について、先日、NHK解説委員が本県で講演した。今現在の状況に関してだけの内容という触れ込みだったが、これまで公共の電波では言えなかった1個人としての思いの丈があったのだろう。聴衆の多くは真実を垣間見た思いだった。

▼入局後、初めて赴任した地が青森県。六ヶ所村の核燃料再処理工場問題では、否応なく原子力について学ぶことになったという。原発事故以降、連日のように解説でテレビ画面に登場した。「政府発表に頼った、危機意識のない報道ではないか」との批判を浴び、そうした矢面にも立った。

▼テレビで解説を何度も聞いているうち、この人なりのこみ上げる怒りや、切なさを垣間見た気がしていたが、じかに話を聞いて納得した部分が多かった。物静かだが、原発事故への思いと信念がはっきりと見えた。現在の原発の状況を福島の人に伝えたいという思いを強く感じたのは私1人だけではあるまい。

▼国が言う「冷温停止」と「冷温停止状態」の使いわけがわかり、なるほどと思った。言葉を操り、それを隠れ蓑にする政府、官僚はフクシマへの安全の保障をまたもや反故にするのではあるまいか。コメの安全宣言を早々と行い、その後、基準値を超えたコメが検出されるという事態に至って知事が謝罪するという報道があったばかり。二の舞は許されない。こちらは推量の「怒っているようだ」ではない、まさしく今、「怒っている」のだ。
【怒涛女史】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2011・12・15）