福島県内の子どもたちの放射線被曝量を軽減する保育、環境づくりに取り組むNPO法人移動保育プロジェクト「ポッケア」（郡山市、上國料竜太理事長）は5月半ばにも、放射線量の低い同市湖南町に「ワクワク自然体験保育園・ココカラ」を開園する。
　郡山市の中心地域に住む未就学児を対象に、放射線量を気にせずに伸び伸びと活動してもらおうという狙い。毎日バスで送迎し、外遊びや地域のお年寄りとの交流を体験してもらう。
　子どもを放射能汚染から守るため、同プロジェクトを立ち上げたのは震災、原発事故後の2011（平成23）年７月。
　放射線量が高くて外遊びができない福島市や郡山市の子どもたちをバスに乗せて県内の線量の低い地域に連れて行き、３～４時間ほど屋外活動して帰って来るという取り組みだった。
　対象は３歳から小学生未満の幼児とし、参加を無料とした。１回につき15～20人ほどが参加し、これまでに約100回実施した。
　安全な場所で子どもを伸び伸びと活動させたいという保護者の強い思いに触れ、上國料さんは「定期的、継続的に安全な場所での刺激的な体験ができる新しい保育の形をつくりたい」と思うようになったという。
　そうした思いから、「自然に毎日触れ、見たり、聞いたり、考えたりすることは子どもの成長には大切なこと。以前から自然体験型の保育園の必要性を考えていたが、震災による放射線問題が保育園をつくる大きなきっかけとなった」と、プロジェクトを始めた経緯を語る上國料さん。
　今後の活動については「これまでの移動プロジェクトを継続させながら、保育園の運営にも取り組む」と話す。
　現在、活動資金を企業からの助成や一般の募金で運営しているが、将来は保育園経営による収入で運営にあたっていきたいとしている。
　園舎は、閉園した旧湖南幼稚園の施設を借り受けた。同園は地域の子どもの数が減り、3年前に閉園。しかし、震災、原発事故後、放射低線量を理由に郡山市中心部から移り住む人や、湖南町の実家に同居する家族も増えるなどして、地域の子どもの数が急増。このため、地元でも新しい保育園を望む声があった。
　保育園周辺の放射線量は、0.08μSV/h（毎時㍃シーベルト）程度。市中心部の0.4㍃シーベルトに比べてはるかに低い。
　広い園庭には、新たにツリーハウスと手作りのピザ窯を設けた。子どもたちが飾りつけを手伝ったかわいらしいデザインのピザ窯は、地域のお年寄りとの交流イベントでも活躍しそうだ。
　開園は５月中旬ごろを予定し、現在4人が入園を希望。問い合わせも数多く舞い込んでいるという。
　開園後は、郡山市開成から湖南町の保育園の間を毎日送迎バスを運行させる。
　時間的には片道40分ほど。屋外で自然に触れながら伸び伸びと活動できれば、子どもの健康への親の不安は少なくとも軽減される。
　上國料さんは「福島で育ったから残念ではなく、福島で育ったからこそいろいろな体験ができて良かったと、子どもたちが思える仕組みをつくっていきたい」と話す。