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コラム・筆は一本也

「ほんとの空を」

震災、津波、原発事故以来、至るところで「復興」の2文字がごく当たり前のように使われている。被災地を見てほしい。むしろ復興よりも、現実的な復旧を掲げて総力を挙げるべきだろう。言葉のあやと言うなかれ。復旧と復興の持つ意味は異なる。復旧とは元通りにすること、英語ならレストレーション。被災地が望むのは何よりもレストレーションのアップだろう。片や復興は、再び盛んにすること、リバイバルである。
 
▼被災地の再生は被災者の切なる願いだが、そのためには原発事故前の住環境に取り戻すのが何よりもの前提条件だ。日本原子力研究開発機構などが調査したところによると、福島県内の道路上(第一原発から半径80㌔以内)の空間放射線量の平均値が、事故から1年半後に5割以上減少したことがわかった。関係者は除染の効率化や迅速化につながる可能性がある、としている。県民にとっても朗報だ。
 
▼例えば、セシウム134の場合、半減期は約2年。一方、セシウム137だと約30年と長い年月を要す。しかし、道路は人間が活動する交通量や、風雨などで減少の割合が早い。ただ、手放しで喜べない点もある。降雨などで道路周辺の土地や側溝に飛散し、流入していることが十分に考えられる。県内の空間放射線量は南会津など一部を除けばまだまだ要警戒だ。
 
▼それだけに徹底した除染で復旧が進まないと、復興の足音は遠のくばかりだ。被災が甚大だった岩手、宮城、福島の3県が足並みをそろえて復旧を果たさない限り、東北の再興もあり得ない。「復興」の声を発するたびに、被災者との溝が深まっている事実を、安倍首相、根本復興大臣は「ほんとの空」と足元をしっかり見つめ、受け止めてほしい。【天下泰平】
 
                      (2013・3・28)

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