日本銀行福島支店の野村充支店長（50）は3月18日、郡山市で講演し、日本経済や福島県の経済をめぐる最近の動向について語った。
　今年のわが国の経済について、野村支店長は「景気は下げ止まっているが、輸出は下げ止まりつつある」。一方、「公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は底堅さを維持」とした。先行きついては「緩やかな回復経路にある」と慎重な構えをみせた。
　福島県経済の現状（2月の金融経済概況）については「震災復旧関連投資の増加と消費の堅調から、緩やかに持ち直している」とし、下げ止まりから持ち直しへとベクトルが上向きであることを強調した。
　具体的には①公共投資が極めて高い水準にあり、住宅投資も増加②個人消費は堅調。一方で大河ドラマ「八重の桜」の放映効果で観光に明るい兆し③海外経済の減速などの影響から生産の減少が続くが、一部に下げ止まりの動きがある、の3点を挙げた。
　こうした点を踏まえ、先行きの見通しでは「震災復旧・復興関連投資が高水準を持続。生産も下げ止まりに向い、改善の動きが広がっていく」と、景況感に期待を持たせた。
　福島県における大河ドラマが及ぼす経済効果の試算は、13年は前年に比べて観光入り込み客数で4・8％増、113億円。3割増では650億円とした。
　このため、「（大河ドラマの効果から）会津は大変な元気で、土産品の売り上げは3～4割増」と述べた。
　福島県が全国ワースト1の耕作放棄地面積に関しては、「開墾政策の失敗であり、農業が復興の足を引っ張っている」とし、規制緩和などの必要性を説いた。環太平洋経済連携協定（TPP）では、参加の方向性を前提にして、「聖域足り得るのはコメなど一部の品目に限られる可能性が高い。むしろ、これを機にブランド米や果物、和牛などの高付加価値品を中心に輸出を拡大していくチャンスととらえ、メリットを生かす施策拡大を望みたい」とした。
　復旧・復興に向けた課題では、県人口が急激な減少傾向にある中、「女性の労働力が必要である」と強調した。
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　野村支店長は千葉県生まれ。東京大法学部卒。総裁秘書、金融市場局参事役、業務局総務課長、福島支店次長などを経て現職。
　郡山市の異業種交流団体MBA21の例会で「日本経済の再生に向けて」と題して講演した。会員ら約30人が聴講した。