昨年12月に発足した第2次安倍内閣の支持率が右肩上がりに伸び、今年1、2月に実施した新聞、テレビ、ネットなど各社の世論調査では60～70％超えが軒並みだ。70％超えは2009年9月の鳩山内閣発足当初以来という。大胆な経済政策「アベノミクス」への期待感に加え、決められなかった政治と酷評された民主党政権の反動も背景にあるようだ。
 
▼その民主・野田政権から一転、今度の安倍政権は決める政治にまい進している。近い将来の再稼働・新増設を視野にした原発ゼロ政策見直しをはじめ、「単独講和」さながらのTPP（環太平洋経済連携協定）交渉参加、国民総背番号制のマイナンバー制度、果ては武器輸出3原則の大幅緩和と、高い支持率を携えて向かうところ敵なしの様相である。
 
▼わが国の道筋を左右する「脱原発」「反原発」の意識、活動もトーンダウンしている。民主党政権が掲げた「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」としたエネルギー政策を安倍首相が見直す考えを示していることについて、NHKが1月に世論調査したところ、43％が「賛成」、「反対」は21％、「どちらともいえない」が30％だった。経済対策が優先するという端的な民意の表れか。しかし、原発の再稼働・新増設への反対は7割に上る。

▼先日、東京電力福島復興本社代表の石崎芳行氏が郡山市で講演した。福島第一原発の現状について、石崎代表は冷温停止状態の1～4号機の循環注水冷却システムや、4号機の使用済み燃料プールからの燃料（新燃料、使用済み燃料1535体）の取り出し計画などを淡々と語った。こうした事故の重大性と危険性の議論などそっちのけで、日本は再び高度成長をひた走ろうというのか。【笑止千万】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・3・4）