今年、設立50年を迎えた混声合唱団「はもる・かい」。これまでの道のりや音楽への思いを主宰者今泉一八さん（70）に聞いた。
今泉さんは、福島県立郡山商業高校在学中に、それまでの同好会から正式な合唱部となって出場した合唱コンクールで東北大会入賞を経験。福島県唯一の受賞を一緒に果たした仲間たちに呼びかけ、はもる・かいを主宰するようになったのは受賞から１年半後の昭和36年４月23日。当初集まったのは６人の仲間だった。
　はもる・かいの「はもる」という言葉は「ハーモニーを作る」という意味と、「歯が漏れる」（笑）の両方を意味しているという。歳を重ね、老いてともに歌い続けていこうという意味合いも兼ねてのネーミングだ。当初目標としていた県大会入賞は早くも次の年に、実質的一位は38年に獲得するが、最高得点ながら時間オーバーで失格。今泉さんは「転勤で郡山を離れる予感があったため、９年勤めた税務署を退職し転勤のない仕事につきました」と転職したいきさつと合唱への熱意を話してくれた。
　次第に実力をつけていった団体だが、当初は学校の音楽室で練習していた団員たちに、練習会場がないという難題が立ちはだかるようになる。しかし、「思う存分練習できる会場がほしい」とかねてから思っていた団員たちは、日曜ごとに廃品回収で得た収益、約130万円を基に、昭和48年、念願の練習場「はもる会館」を完成させる。団員達の手作りによる練習場の完成だった。
　自分たちの音楽作りにこだわる今泉さんは熱く語る。「コンクールを目標に練習する事を止めました。」「日本の歌をうたえる合唱団になりたいのです。難易度で曲を選ぶことや、それによって評価が変わるコンクールは、私たちの合唱団には向いていません。心に響く歌を歌いたいのです」
　練習は毎週火曜日と木曜日、７時半から９時半まで。月に一度は土、日曜にわたり合宿があり練習は長時間にわたる。団員たちの中には、今泉さんの公民館活動やコーロみはるなど他での活動に、重複して参加している人も多くいる。大変と思える練習も難なくこなし、「今泉さんの下で歌うことが人生の喜びとなっている」と話す。最高齢は８４歳。設立時からの団員もいて実力派の社会人合唱団として県内でも屈指の存在だ。来年２月18日には東京で行われる音楽復興支援コンサートに出演し、郷土郡山を綴った『安積野』を歌う予定という。　　　歌に込める思いは「安らぎと勇気」。震災による被害を受けた今だからこそ、「音楽の持つ力を信じ、いつでも何にでも全力で向かう姿勢を声にして、ともに立ち上がる証を示したい」と情熱を燃やす今泉さん。
　「はもる・かい50周年記念演奏会」は当初、今年４月24日に行われる予定だった。しかし、今回の震災で延期となり、50周年目の最終日である来年の４月22日、郡山市文化センター大ホールで行われる。
　～日本人の歴史が生んだ歌、生活が生んだ歌、常に我々の心を癒し満たしてくれる「日本の歌」～が大ホールの隅々に、聴衆の心にひびきわたる事だろう。